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2007年9月12日 (水)

鬱蒼たる不思議の屋久島と屋久杉

屋久島で多少の山歩きをしたり車で行ける紀元杉等を見てしまうと、鬱蒼として不思議な屋久島や屋久杉との思いが沸いて来るようになるようです。

1935mの最高峰宮之浦岳は、島の海岸の低地から一気に稜線が立ち上がるため、島の平地からはこの最高峰は見えません。島の周囲のどこからも最高峰が見えないと云う事は、1周100km余りの島であるにもかかわらず、島全体が懐の深い山で不思議に満ちたこの山の前提条件をなしています。中に入ればアルプスの雰囲気、離れて見ると島と云うより2000m近い落差の迫力ある洋上の山です。

流行を追わない人でも、日本の色々な高い山に登っているとその個性と魅力に、なんとなく100名山を意識するようになりがちです。やがて容易には行けない屋久島の宮之浦岳にも行ってしまうのですが、多くの山を見て肥えた目にも最も印象に残る山の一つになります。又屋久杉の様々な工芸品を見てしまうと他の地域では見られない複雑且つ味わいのある模様も、その不思議さにプラスされるのかもしれません。

懐の深い山である事に加え、島周辺に暖流の黒潮が通る事、全島花崗岩の島である事、亜熱帯ながら四季のある島で台風の街道に位置する事等、世界で他に例を見ない自然環境の組み合わせです。暖流の水蒸気と年間雨量10,000mmと云われる日本最多の雨を降らせる水と懐の深い山が、花崗岩の島で土が少なく保水が困難な点を克服し、植物が育つ環境を提供しています。花崗岩の島で養分が少なく年輪が狭くなり更にその狭い年輪に樹脂が溜まる為、細菌が混入できない程に稠密な屋久杉のような木が生まれました。切り株部分が何百年も土に埋もれても腐らない土埋木(ドマイギ)があるがゆえに、屋久杉の工芸品としての恩恵があります。

屋久島の木は栄養過多にならず、土の少ない土地で生き延びる為には他の木に寄生しその木を肥やしにして乗っ取ったり、一つの木に異なる木が共生(寄生?)したりと、厳しい生存競争があります。又、毎年頻繁に台風が来るため、木も運動して強風が吹けばばたばた倒れる東日本の木とは比べ物にならない程に、強靭な生命力の強い屋久杉を生みました。富士山に似たような山は世界各地にありますが、屋久島のような鬱蒼たる不思議に満ちた山は、世界にも例が無く、日本で最初の世界遺産の登録を受けたのも当然との印象です。

遺伝子的には屋久杉も普通の杉も、基本は変わらないとの事ですが、質素で運動を良くする木は強靭で長生き、超寿命の木に見られる筋骨隆々の木ができた訳です。又その筋骨隆々の故に、建築資材として不向きで伐採されずに何千年も生き残る事になりました。1000年以上のものを屋久杉と呼びますが、山中ではたくさんの巨木があり、屋久島以外では木の親分で通りそうなのが、屋久島ではまだまだ駆け出しと扱われるのだろうかと思って見てしまいます。

日本で根付きの魚の恵みがあるのは、北は岩手、南は大分、長崎までで、鹿児島の屋久島には意外と海の恵みは今ひとつです。良い漁場は良い森林が不可欠である事は、最近常識化してきました。つまり豊かな森のミネラルや養分が川を伝い海に至り、食物連鎖の起点である植物プランクトンを生み、豊かで美味しい魚や貝・海藻山を一般的に育てます。豊かな漁協のその他条件の一つは暖流と寒流の交わる所で、この点屋久島は暖流のみに囲まれて、花崗岩の島でもあり、海の恵みは意外と少ないのです。飛び魚は年中取れるし、鯖はたくさんいるのですが、それ以外が少ないのは沖縄と同様です。屋久島の場合海の恵みが今一つですが、苔のある水分に満ちた環境が、更なる山の恵みを生み、日本の他の地方では見られない特徴を作っています。

我々の普通の木の概念は、幹、枝、葉、根が同種類で且つ明確に区別できますが、この島ではどこまでが根で幹か分からないもの、異なる枝や葉が一つの木に生えているもの、1つの木が他の木を乗っ取っているもの、大きな石の上に生えている木等、異次元の世界です。日本の他の山や、アジア、中米の熱帯雨林とも比較に成らない程の巨大さと、鬱蒼たる不思議に満ちた山々です。

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